この記事の要点
  • 「SiCは終わった」と言われた2024-2026年、復活シナリオが始まっている。ロームは2026年3月期に過去最大の1,584億円赤字+1,936億円減損(EV低迷)を計上したが、同時にローム/東芝/三菱電機の3社が2026/3/27にパワー半導体事業の統合協議で基本合意——世界2位連合誕生へ動き出した。
  • 新用途はAIデータセンター電源・防衛・eVTOL(電動垂直離着陸機)・産業モータ。EVだけに依存していた需要が分散し、これらの「電圧を効率的に変える」用途すべてでSiCが必須に。「物理ボトルネック=電気を熱で捨てないこと」に対するSiCの本質優位は変わらない。
  • 本命7・準本命4・関連3の3段ランクでデバイス本道(ローム/三菱電機/富士電機)→ウェハ(レゾナック/住友金属鉱山/住友電気)→検査(レーザーテック)までサプライチェーン全層を網羅。
📖 はじめに — この記事で出てくる専門用語(クリックで開く)
  • SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素): ケイ素+炭素の化合物。普通のシリコンより高電圧・高温・高速に強い次世代パワー半導体材料。EVや産業機械の電源回路を小型・高効率にできる。
  • パワー半導体: 電気の流れを制御する半導体の総称。家電のスイッチング電源からEVのインバータ、産業モータの制御まで広く使われる。
  • MOSFET: パワー半導体の代表的素子。電圧で電流をオン/オフするスイッチ。SiCを使うと小型・高効率化が可能。
  • SBD(ショットキーバリアダイオード): 高速スイッチング向けのダイオード。SiC化で電力損失を大幅削減。
  • インバータ: 直流電気を交流電気に変換する装置。EVのモータ駆動・産業ロボット・データセンター電源で必須。
  • パワーモジュール: パワー半導体素子(MOSFET/IGBT等)を複数組み合わせた部品。EVのインバータや産業機械の心臓部。
  • SiCウェハ: SiC単結晶を薄くスライスした円盤。シリコンより硬く割れやすく、製造難易度が高い。8インチ化で量産コストが下がる。
  • SiCエピタキシャルウェハ(SiCエピウェハ): SiCウェハの上に高品質のSiC薄膜を結晶成長させた高機能ウェハ。デバイス製造の起点となる素材。
  • GaN(窒化ガリウム): SiCと並ぶ次世代パワー半導体材料。SiCが高電圧・大電流GaNが高周波・小電力と住み分けがある。本記事ではSiC専門だが対比で言及。
  • IGBT: 従来型のパワー半導体素子。シリコン製。SiCより低速だが安価で、産業機械では今も主流。
  • BEV(バッテリーEV): バッテリー電気自動車。SiC需要の主要ドライバだが2024-2026年は世界的に減速。
  • eVTOL: 電動垂直離着陸機。「空飛ぶクルマ」の本命形式。航空電動化で新たなSiC需要源。
  • 8インチ(200mm)SiC基板: 直径200mmの大型SiCウェハ。従来の6インチから8インチ化で1枚あたりのデバイス取得数が約1.8倍に増え、量産コストが大きく下がる。
  • UPS: 無停電電源装置。データセンターでは必須で、SiCで効率化が進む。
  • PSU(電源ユニット): サーバ内部の電源装置。AIサーバの大電力化でSiC/GaN採用が拡大。

SiCパワー半導体とは — 産業構造と物理ボトルネック

結論

「EV凋落でSiC終わった」は誤読。EV需要の調整局面を経て、用途はAIデータセンター電源・防衛・eVTOL・産業モータに分散しつつある。同時に3社統合で世界2位連合が誕生し、業界構造が抜本的に再編される転換点に来ている。

SiC(シリコンカーバイド=炭化ケイ素)パワー半導体は、2020-2023年の世界的なEV(電気自動車)ブームで「次世代の主役」と呼ばれた。Tesla Model 3が車載インバータにSiCを採用したのを皮切りに、世界中の車載半導体メーカーが大規模投資に走った。

しかしEV市場が世界的に減速し——米国でのEV優遇措置縮小、欧州での内燃機関車販売規制の見直し、中国EVバブル調整——SiC需要の伸びが鈍化し、各社は在庫調整と価格下落に直面した。ロームは過去最大の連結最終赤字1,584億円と1,936億円の減損損失(EV低迷で見込んだ生産能力が過剰となり、固定資産の回収可能性を見直した結果)を計上した(2026年3月期、同社開示)。

しかし**「SiCは終わった」と決めつけるのは早計である。SiCの本質的優位——「高電圧・高温・高速スイッチング」によって電気の損失を熱で捨てない——は変わらず、用途がAIデータセンター電源・防衛・eVTOL・産業モータ・鉄道分散シフト**している。AI半導体ブームで「データセンター電源1基あたりの消費電力が桁違いに増える」現象が起きており、UPS(無停電電源装置)・PSU(サーバ電源)・高圧変換のすべてでSiCの採用が拡大している。

決定的な構造転換としてローム・東芝・三菱電機の3社がパワー半導体事業の統合協議で基本合意(2026年3月、3社IR)し、統合が実現すれば世界首位の独インフィニオン(シェア22.8%)に次ぐ世界2位連合(三菱電機5.5%+富士電機4.9%+ローム3.2%相当)が誕生する。業界構造の抜本再編が進行している。

SiC市場の規模感

結論

SiCウェハだけで2021年比+195%の1,621億円市場規模に到達すると予測(複数調査機関)。デバイス含めて2030年に約1兆円規模へ。EV単独需要は調整局面を経たが、AI電源・防衛・eVTOLが新ドライバとして台頭している。

SiCパワー半導体市場は、ウェハ単体では2026年に2021年比約3倍(+195%)の1,621億円規模に拡大すると予測される(複数調査機関)。デバイスまで含めると2030年に約1兆円市場との見方もある。世界トップのインフィニオン・テクノロジーズが市場シェア約22.8%、トップ10に残る日本勢は三菱電機(5.5%)・富士電機(4.9%)・ローム(3.2%)の3社のみで、合計シェアは13.6%程度。

1,584億円
ローム 過去最大の最終赤字(EV低迷調整局面、2026年3月期開示)
1,936億円
ローム 減損損失(EV向け生産能力の過剰で固定資産見直し)
世界2位
ローム/東芝/三菱電機3社統合後の見込み(3社基本合意、2026年3月)

サプライチェーン(=SiC素材→デバイス→モジュールの流れ)は以下の8階層に分解できる:

階層何をする工程か(平易説明)代表銘柄(本記事収載)
L1 SiC原料粉末超高純度SiC粉末を合成(本記事スコープ外・素材専業)
L2 SiC単結晶インゴット昇華法/溶液法でSiC単結晶を育成住友金属鉱山 / 住友電気工業 / オキサイド
L3 SiCウェハ加工単結晶を薄くスライス・研磨上記+セントラル硝子
L4 SiCエピウェハウェハ上に高品質薄膜を結晶成長レゾナックHD(世界トップ)
L5 SiCデバイス製造MOSFET・SBD・IGBT等のチップ製造ローム / 三菱電機 / 富士電機 / ルネサス / デンソー
L6 SiCモジュール組立デバイスを組み合わせたパワーモジュール製造三社電機製作所 / 新電元工業
L7 SiC加工装置SiCウェハの切断・研磨・成膜装置タカトリ
L8 SiCウェハ検査欠陥検査・電気特性検査レーザーテック

関連銘柄 全14社 一覧

ランクの定義

🟢 本命: SiC事業が主力 + 世界シェア上位 + 構造再編の主役
🔵 準本命: SiC事業で重要な位置 + 規模/事業比率は中程度
⚪ 関連: SiC事業への関与あり + 規模・事業比率は限定 + ニッチ/周辺

※ ランクは「テーマとの関与度・事業比率・世界シェア」で判定。株価の上下とは無関係。Fundabase独自分類。

コード銘柄役割世界シェア/特徴分類
6963ロームSiC事業の代表選手・3社統合の主役パワー半導体世界シェア約3.2%🟢本命
6503三菱電機パワーデバイス事業・3社統合の主役パワー半導体世界シェア約5.5%(日本トップ)🟢本命
6504富士電機パワー半導体大手・SiC強化パワー半導体世界シェア約4.9%🟢本命
4004レゾナック・ホールディングスSiCエピウェハ世界トップ(外販市場)米Wolfspeedと2強🟢本命
5713住友金属鉱山8インチSiC基板量産ライン構築子会社経由で200mm SiC基板量産決定🟢本命
5802住友電気工業SiCウェハ新工場建設・量産実施化合物半導体の老舗・GaN/SiC両建て🟢本命
6920レーザーテックSiCウェハ欠陥検査装置マスク検査世界独占+SiC検査拡大🟢本命
6723ルネサスエレクトロニクスSiCパワー半導体量産化車載半導体大手・SiC事業育成中🔵準本命
6902デンソーSiC投資+ロームへの買収提案で再編加速自動車部品トップ・SiC強化🔵準本命
6882三社電機製作所SiC-MOSFETモジュール量産パワー半導体モジュール専業🔵準本命
6338タカトリパワー半導体向けSiC材料切断加工装置SiC加工装置の専業中堅🔵準本命
4044セントラル硝子SiCウェハ量産開始ガラス・化学品メーカーが新規参入⚪関連
6521オキサイドSiC単結晶製造の研究開発光学結晶大手・SiC育成中⚪関連
6844新電元工業パワーモジュール・SiC対応電源・パワー半導体製造の中堅⚪関連
EVは終わってない。SiCの主役が変わっただけだ。

🟢 本命(全7社)

ローム(6963)

何をしている会社か: パワー半導体・LSI製造の京都の中堅メーカー。SiC事業の世界トップ集団だが、2026年3月期に過去最大の赤字を計上した。

SiCパワー半導体の世界的代表選手で、世界シェア約3.2%。2010年に世界で初めてSiC-MOSFETを量産したパイオニアだが、EV市場の世界的減速を受けて過去最大の連結最終赤字1,584億円1,936億円の減損損失(EV用パワー半導体の生産能力が過剰となり、固定資産の回収可能性を見直した結果)を計上した(2026年3月期、同社開示)。同社は「過去のうみは出し切った。今後3年間はSiC投資を年平均500億円に抑え、利益を出せる会社に戻る」と方針を表明し、翌期に黒字転換する見通しを発表した。デンソーからの買収提案を受けた後、東芝・三菱電機との3社統合協議で基本合意(2026年3月)。業界再編の主役として今後数年の動向が業界全体を左右する。

三菱電機(6503)

何をしている会社か: 重電・FA・空調から鉄道・宇宙・防衛まで幅広い総合電機メーカー。パワー半導体事業では日本トップシェア。

パワー半導体世界シェア約5.5%で日本トップ、世界では独インフィニオン(22.8%)に次ぐクラス。本記事ではパワーデバイス事業セグメントに焦点を当てる。熊本県で進めた8インチSiC工場を完成させ、AIデータセンター電源・産業ドライブ向けのSiC需要の早期立ち上がりを受けて生産開始を前倒しした実績を持つ。ローム・東芝とのパワー半導体事業統合協議で基本合意(2026年3月)しており、統合実現後は世界2位連合の中核を担う。重電・FA・宇宙・防衛と事業の幅が広く、パワー半導体単独感応度は本命陣の中では中程度だが、業界での位置は本命格。

富士電機(6504)

何をしている会社か: 重電・産業システム大手。パワー半導体世界シェア4.9%で日本2位の本命。

パワー半導体世界シェア約4.9%で日本2位、世界4位級。三菱電機と並ぶ日本のパワー半導体大手で、SiC事業の本命格の一つ。産業向けインバータ・鉄道・産業モータ・データセンター電源の幅広い顧客基盤を持ち、EV単独依存度は三菱電機よりやや低めで業績変動が相対的にマイルド。AI半導体ブームでデータセンター向け電源装置への採用が拡大しており、SiC事業の伸びを支えている。3社統合協議(2026年3月基本合意)の枠組みには参加していないが、業界再編の動向次第で第2の連合形成の可能性も指摘される。

レゾナック・ホールディングス(4004)

何をしている会社か: 半導体後工程材料グローバルNo.1。SiC事業ではエピタキシャルウェハで世界トップ。

SiCエピタキシャルウェハで世界トップシェア(外販市場で米Wolfspeedと2強)。同社は「SiCデバイスを自社で作らない」ことを戦略の核に据え、SiCデバイスメーカーと競合せず黒子に徹するビジネスモデルで顧客の信頼を獲得している。6インチSiCエピウェハを既に量産しており、山形県に新工場建屋を建設し生産能力を拡張する計画を進めている。8インチSiCエピウェハの実用化も進行中。半導体後工程材料(NCFフィルム・封止材・CMP研磨材)で複合事業を展開しており、SiC単独感応度は装置3強より小さいが、SiCサプライチェーン上での代替不可能性は極めて高い。

住友金属鉱山(5713)

何をしている会社か: 銅・ニッケル・金など非鉄金属大手。本記事では子会社経由のSiC基板量産事業に焦点。

非鉄金属大手で、本記事では子会社経由の8インチ(200mm)SiC基板量産ライン構築に焦点を当てる。直径200mm(8インチ)のSiC基板の量産化は業界全体のコスト低減の鍵で、同社の量産決定は日本SiCサプライチェーンの強化に寄与する。同社の本業は銅・ニッケル製錬・電池正極材で、SiC事業は新規育成領域。EVバッテリー材料との両建てで、車載市場全体への露出を持つ。SiC事業単独の感応度は限定的だが、量産規模拡大時のアップサイドは大きい。

住友電気工業(5802)

何をしている会社か: 電線・自動車部品の世界大手。化合物半導体(SiC/GaN)の老舗で、SiCウェハ事業の主要プレイヤー。

電線・自動車部品の世界大手で、化合物半導体の老舗として知られる。SiC事業では新工場建設・量産実施を進めており、GaN(窒化ガリウム)とSiCの両建て体制を持つ点が特徴。光通信用光ファイバ・自動車ワイヤハーネスの本業比率が高いため、SiC単独の業績感応度は限定的だが、化合物半導体分野での技術蓄積は深い。長期的にAI/車載/通信の3用途で複合的にSiC需要を取り込む構えで、本命格のポジションに位置付ける。

レーザーテック(6920)

何をしている会社か: 半導体マスク欠陥検査装置で世界独占。SiCウェハ欠陥検査でも事業拡大中。

EUVマスク欠陥検査装置で世界独占(シェア100%級)の専業メーカー。本記事ではSiCウェハ欠陥検査装置事業に焦点を当てる。SiCウェハは結晶欠陥が多く歩留まり(=製造成功率)を上げるのに高度な欠陥検査技術が必須で、同社の技術は業界の標準的選択肢の一つ。EUVマスク検査が本業のため業績感応度はEUV事業に大きく依存するが、SiC検査事業は安定成長の補完領域。AI半導体製造装置の高需要時代において、検査装置層は装置サイクルから1四半期程度先行する性質があり、業界モメンタムの先行指標としても有用。

🔵 準本命(全4社)

ルネサスエレクトロニクス(6723)

何をしている会社か: 車載マイコン世界トップの半導体メーカー。SiC事業も育成中の業界主要プレイヤー。

車載マイコン世界トップの半導体メーカーで、SiCパワー半導体の量産化を進める。本業の車載マイコン・MCUがメインで、SiC事業はまだ成長領域。EV向け車載インバータ・産業向けの両方を狙う体制で、長期では本命格に格上げの可能性もある。ローム/三菱電機/富士電機の3強に比べるとSiC事業比率は小さいため、現時点では準本命とした。3社統合協議の枠組みには参加していないが、業界再編の中での立ち位置が今後の注目点。

デンソー(6902)

何をしている会社か: トヨタG筆頭の自動車部品グローバル大手。SiC事業への戦略投資+ローム買収提案で業界再編の引き金を引いた。

自動車部品の世界2位級メーカーで、本記事ではSiC事業への戦略的露出に焦点を当てる。2026年3月にロームに対して買収提案を行ったことが業界全体に大きな波紋を広げ、結果としてローム・東芝・三菱電機の3社統合協議の引き金となった(同月の経緯)。同社自身もSiCパワー半導体への投資・製造連携を進めており、車載用SiCの内製化を進める姿勢。本業の自動車部品事業との連動性が高く、業績全体への寄与は限定的だが、業界構造を動かしたキープレイヤーとして準本命に位置付ける。

三社電機製作所(6882)

何をしている会社か: SiC-MOSFETモジュール量産が主力のパワー半導体モジュール専業メーカー。

SiC-MOSFETモジュール量産を主力とするパワー半導体モジュール専業メーカー。ローム・三菱電機・富士電機がデバイスチップを作り、三社電機がそれを組み合わせてモジュール製品にする「業界の中間プレイヤー」の代表格。事業比率がSiC/パワー半導体に集中しているテーマ純度の高さが強みで、本命格の事業構成だが、時価総額・売上規模が小さいため準本命に位置付ける。

タカトリ(6338)

何をしている会社か: パワー半導体向けSiC材料切断加工装置の専業中堅メーカー。

パワー半導体向けSiC材料切断加工装置の専業中堅メーカー。SiCウェハ製造で必須のワイヤソー切断装置を主力とし、ニッチな装置層で技術蓄積を持つ。事業規模は本命陣に比べ小さいが、SiCウェハ事業の拡大局面では装置層からの先行受益が見込まれる。本業の感応度はSiC事業に集中しており、テーマ純度は高い。

⚪ 関連(全3社)

セントラル硝子(4044)

何をしている会社か: フッ素化学・ガラス大手。先端半導体材料への拡大の一環でSiCウェハ量産を開始した新規参入組。

フッ素化学・ガラス大手で、先端半導体材料事業の拡大を進める中でSiCウェハ量産を開始。本業のフッ素化学品(半導体エッチングガス・薬液)を含めると半導体材料事業全体での露出は大きいが、SiC単独の業績感応度は現時点で限定的。新規参入組として今後のシェア拡大ペースが鍵。

オキサイド(6521)

何をしている会社か: 光学結晶・センサ素子の中堅。SiC単結晶製造の研究開発を進める成長期待銘柄。

光学結晶・センサ素子の中堅メーカーで、SiC単結晶製造の研究開発を進める。事業規模は小さいが、SiC単結晶育成技術への投資を続けており、量産化が進めば中長期での評価点として注目される。短期業績への寄与は限定的。

新電元工業(6844)

何をしている会社か: 電源・パワー半導体製造の中堅メーカー。SiC対応モジュールも展開する。

電源・パワー半導体製造の中堅メーカー。SiC対応のパワーモジュールを展開し、産業機械・車載向けに供給する。本業はシリコン系パワー半導体・電源装置のため、SiC単独感応度は本命陣に比べ小さいが、パワー半導体全体の業界モメンタムからは恩恵を受ける。

投資家が継続観測すべき構造的指標

観測ポイント

SiC関連は「3社統合協議の進捗」「EV市況の回復ペース」「AI電源・防衛・eVTOLの新用途立ち上がり」の3軸を四半期で追う。業界再編が動くと個別銘柄の位置付けが大きく変わる構造的な転換点にある。

  • ローム/東芝/三菱電機 3社統合協議の進捗 — 2026年3月の基本合意から最終契約・スキーム決定までの動きで業界構造が決まる。
  • ロームの業績回復ペース — EV低迷調整局面からの黒字転換進捗。SiC事業の底打ちタイミングが見える先行指標。
  • 三菱電機・富士電機の四半期パワー半導体売上 — 産業/データセンター向けの伸びが、EV低迷を相殺できているかが業績の方向性を決める。
  • レゾナックの8インチSiCエピウェハ量産化のタイミング — 8インチ移行は業界全体のコスト構造を変える転換点で、レゾナックの製品立ち上げペースが重要。
  • 米国EV優遇措置・欧州内燃機関規制の動向 — EV需要の回復ペースを左右し、SiC需要の主軸が戻るかを決定する。
  • AIデータセンター電源・eVTOL機向けSiC採用事例 — 新用途の立ち上がりが業界全体の物語(ナラティブ)を変える材料。

このテーマのリスクと制約

注意

SiC事業は需要構造の調整局面を経ており、EV市況の回復ペース次第では追加の減損や赤字計上のリスクがある。3社統合協議は基本合意段階であり(2026年3月)、最終契約までに条件変更や離脱が起きる可能性がある。

第二に、中国SiCメーカーの攻勢が業界全体の収益性に重い圧力をかけている。中国国内勢が大規模投資で価格競争に出てくると、日本勢のシェアと利益率が同時に圧迫されるリスクがある。第三に、8インチ化のタイミング——SiCウェハの8インチ化は業界全体のコスト構造を変える転換点で、移行のタイミングを誤った企業は競争劣後する可能性がある。レゾナックや住友金属鉱山の8インチ量産進捗が、サプライチェーン全層の競争力に影響する。第四に、GaN(窒化ガリウム)との用途棲み分け——SiCが高電圧・大電流向け、GaNが高周波・小電力向けという棲み分けは現時点で成立しているが、用途領域の境界線は技術進化で動く。

要するに
  • 「SiCは終わった」は誤読。ロームの2026年3月期赤字は需要構造の調整局面で、AIデータセンター電源・防衛・eVTOL・産業モータに用途が分散しつつある。
  • 業界構造の転換点。ローム/東芝/三菱電機が統合協議で基本合意(2026年3月)し、実現すれば世界2位連合(対インフィニオン)が誕生する。
  • 本命7社はデバイス3強(ローム/三菱電機/富士電機)+ ウェハ層(レゾナック/住友金属鉱山/住友電気) + 検査(レーザーテック)。サプライチェーン全層をカバー。
  • 観測すべき構造指標: 3社統合協議の進捗・ロームの業績回復ペース・三菱電機/富士電機の四半期パワー半導体売上・レゾナックの8インチSiCエピ量産化を四半期ごとに追う。

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