日本企業の業績予想には「クセ」がある
日本の上場企業は毎年、翌期の業績予想を開示する。この予想は企業ごとに「保守的に出す会社」と「強気に出す会社」に分かれる。そして、このクセは驚くほど一貫している。
ある企業は毎年のように期初予想を低く出し、四半期ごとに上方修正を繰り返す。別の企業は強気の予想を出して、下方修正に追い込まれる。このパターンを見抜けるかどうかが、投資判断を大きく左右する。
上方修正率とは何か
上方修正率とは、過去の決算期において「期初予想に対して実績がどれだけ上振れたか」を集計した指標だ。
例えば、直近5期のうち4期で実績が期初予想を上回った企業の上方修正率は80%。この企業の今期予想も上振れる可能性が高い、と推測できる。
KABUDOでは個別銘柄の業績タブで、各決算期の「期初予想 → 実績」の乖離率をグラフと表で確認できる。
なぜ保守的な予想を出す企業があるのか
企業が保守的な予想を出す理由は複数ある。
1. 下方修正のリスク回避 下方修正はネガティブサプライズとなり、株価の急落を招く。経営陣は「予想未達」の評判を避けたがる。
2. 為替前提の保守化 輸出企業は為替前提を保守的に設定する傾向がある。1ドル=140円で計算し、実際は150円で推移すれば、その差分が上方修正となる。
3. 企業文化 特に製造業の中堅企業では、「手堅い数字を出す」ことが社内文化として根付いている場合がある。
上方修正率が高い企業の特徴
上方修正率が80%以上の企業には、いくつかの共通パターンがある。
利益率が安定している 売上変動に対して利益がブレにくい企業は、保守予想を出しても実績が安定して上回る。営業利益率の推移が安定している企業に多い。
ストック型ビジネス サブスクリプションや保守契約など、積み上がる売上がベースにある企業は、予想を控えめに出しやすい。
ニッチトップ 競合が少なく価格決定力がある企業は、利益の下振れリスクが小さいため保守予想が通りやすい。
実践的な使い方
ステップ1: 上方修正率でスクリーニング
KABUDOの上方修正ランキングで、上方修正率が高い企業を一覧できる。ここから候補をリストアップする。
ステップ2: 期初予想のタイミングを狙う
保守的な企業は、期初予想の発表直後にPERが高く見える。市場がそのまま額面通りに受け取るため、株価が売られることもある。ここが買い場になる。
3ヶ月後の1Q決算で上方修正が出れば、株価は見直される。
ステップ3: 修正込みPERで本質を見る
KABUDOの修正込みPERは、過去の上方修正パターンを加味して算出される。通常のPERが15倍でも修正込みPERが11倍なら、過去の傾向から今期も上振れる可能性が高いことを示唆する。
個別銘柄の概要タブで「予想PER」と「修正込みPER」の乖離を確認しよう。
注意点
上方修正率が高い企業でも、以下の場合は注意が必要だ。
- 事業環境の大きな変化: 過去のパターンが通用しないほどの外部環境変化があった場合
- 経営陣の交代: 保守的な予想を出す文化は経営陣に紐づくため、トップ交代で変わることがある
- 一時要因の混在: 資産売却益などの特別利益が上方修正の主因だった場合、毎年繰り返されるとは限らない
上方修正率は「傾向」であって「保証」ではない。他の指標と組み合わせて使うことで、投資判断の精度が上がる。