PERが低い=割安、とは限らない
PER(株価収益率)は投資判断で最も使われる指標の一つだ。「PERが10倍以下なら割安」という単純なルールで銘柄を選んでいる個人投資家は少なくない。
しかし、低PER銘柄への投資で痛い目を見た経験がある人も多いはずだ。PERが5倍でも株価が下がり続ける銘柄がある一方で、PER30倍でも上昇し続ける銘柄がある。なぜか。
落とし穴1: 一時的な利益でPERが低く見える
特別利益(資産売却益、訴訟和解金など)で純利益が一時的に膨らんでいるケースがある。この場合、EPSが高く出るためPERは低く計算されるが、翌期以降は利益が元に戻りPERは上昇する。
チェック方法: 個別銘柄の業績タブで、純利益が前年比で急増していないか確認する。営業利益の推移と乖離している場合は特別利益の影響を疑うべきだ。
落とし穴2: 業績悪化が織り込まれている
市場はある程度の先見性を持つ。PERが極端に低い場合、「今の利益水準が持続しない」と市場が判断している可能性がある。
典型的なのは景気敏感株だ。好況期の高い利益でPERが5倍に見えても、不況期に利益が半減すれば実質PER10倍、赤字転落すればPERは計算不能になる。
チェック方法: 業績タブで過去10年の利益推移を確認し、利益の振れ幅が大きい銘柄は「今のPER÷2」で考えるくらいがちょうどいい。
落とし穴3: 構造的な低評価セクター
銀行・電力・鉄鋼など、構造的に低PERに放置されるセクターがある。これらは成長期待が低いため、PERが8〜10倍でも「割安」ではなく「適正評価」である場合が多い。
チェック方法: KABUDOの業種一覧で同業種の平均PERを確認し、セクター平均と比較する。セクター平均が10倍なのにその銘柄が9倍なら、それは「割安」ではなく「普通」だ。
落とし穴4: 会社予想が楽観的すぎる
日本企業は一般的に保守的な予想を出す傾向があるが、中には楽観的な予想を出す企業もある。会社予想ベースのPERが低くても、実績が予想を下回れば実質PERは高くなる。
チェック方法: KABUDOの修正込みPERランキングでは、過去の「予想→実績」の乖離率を加味した実質PERを算出している。修正込みPERが通常のPERより高い銘柄は、会社予想が楽観的な可能性がある。
落とし穴5: 株主還元が少ない
利益を出していても株主に還元しない企業のPERは低くなりがちだ。配当もせず、自社株買いもせず、成長投資もしない ——「お金を貯めるだけ」の企業は、低PERのまま放置される。
チェック方法: 配当タブで配当性向と配当推移を確認。ROEが低い(5%以下)にもかかわらず内部留保を積み上げている企業は要注意。
本当の割安株を見つけるには
低PERを出発点にしつつ、以下を組み合わせて総合判断する:
- PER × ROE: PERが低くてROEが高ければ、利益効率が良いのに安い=真の割安候補
- PER × 成長率: 成長率が高いのにPERが低い銘柄は、市場が成長を過小評価している可能性
- 修正込みPER: 上方修正の癖がある銘柄なら、見かけのPERより実質PERはさらに低い
- 信用倍率: 信用倍率が低い(売り残が多い)低PER銘柄は、踏み上げによる上昇も期待できる
KABUDOのスクリーナーでPER上限を15倍、ROE下限を10%に設定すれば、バリュートラップを避けた質の高い割安株を効率的にスクリーニングできる。