市場は感情で動く
株式市場は理論的には「将来キャッシュフローの現在価値」を反映するはずだが、現実にはそうならない。短期的には、投資家の感情 ——恐怖と楽観—— が株価を大きく動かす。
問題は、多くの個人投資家がこの感情に巻き込まれることだ。市場が上がると「もっと上がる」と思って高値で買い、市場が下がると「もっと下がる」と思って安値で売る。
センチメント指標を使えば、今の市場がどの程度の楽観・恐怖状態にあるかを数値で把握できる。感情に流されない判断の土台になる。
日経VI(ボラティリティ・インデックス)
日経VIは、日経平均オプションの価格から算出される「市場が予想する今後1ヶ月の変動率」だ。「恐怖指数」とも呼ばれる。
水準の読み方
| 日経VI | 状態 | 意味 | |--------|------|------| | 15以下 | 低恐怖 | 市場は楽観的。凪の状態 | | 16〜22 | 通常 | 平常運転 | | 23〜30 | 警戒 | 不安が高まっている | | 30超 | 恐怖 | パニック的な売りが出ている |
逆張りシグナルとしての使い方
日経VIが30を超えるような恐怖状態は、過去の実績では中長期的な買い場であることが多い。市場が総悲観のときに買い、楽観のときに慎重になるのが基本戦略だ。
ただし、VIが高い状態がすぐに解消されるとは限らない。2008年のリーマンショック時や2020年のコロナショック時は、VIが高い状態が数週間〜数ヶ月続いた。
ポイント: VIの絶対水準よりも、VIが急上昇した後に反転し始めたタイミングが実際の買い場になりやすい。
騰落レシオ
騰落レシオは、市場全体で「値上がり銘柄数 ÷ 値下がり銘柄数 × 100」で計算される。通常は25日移動平均を使う。
水準の読み方
| 騰落レシオ | 状態 | 意味 | |-----------|------|------| | 120超 | 過熱 | 買われすぎ。短期的な調整に注意 | | 80〜120 | 通常 | 特別なシグナルなし | | 70以下 | 低迷 | 売られすぎ。反発の可能性 |
日経VIとの組み合わせ
日経VIと騰落レシオは異なる角度から市場を測定している。
| 日経VI | 騰落レシオ | 解釈 | |--------|-----------|------| | 高い(恐怖) | 低い(低迷) | 強い買いシグナル — 市場全体がパニック的に売られている | | 低い(楽観) | 高い(過熱) | 警戒シグナル — 楽観の極み。ポジション縮小を検討 | | 高い | 高い | 混在 — 一部で不安がありつつ物色は旺盛。方向感なし | | 低い | 低い | 無関心 — 市場参加者が少ない。ボラティリティが低く動きが小さい |
KABUDOのセンチメント機能
KABUDOのセンチメントページでは、日経VIと騰落レシオを統合した「投資心理指数」を0〜100のスコアで表示している。
- 0〜30: 恐怖 — 市場が売られすぎ。中長期の買い場を探す局面
- 30〜70: 中立 — 通常の市場環境
- 70〜100: 楽観 — 過熱感あり。新規投資は慎重に
このスコアは個別銘柄の売買判断に直接使うものではなく、市場全体の温度感を把握するためのものだ。
センチメント指標の限界
センチメント指標は万能ではない。
タイミングの精度が低い: 「売られすぎ」のシグナルが出ても、そこからさらに下がることは珍しくない。シグナルは「そろそろ」であって「今すぐ」ではない。
構造変化に弱い: 金融危機のような構造的な問題では、通常の水準感が通用しない。
個別銘柄には使えない: センチメント指標は市場全体の指標であり、個別銘柄のファンダメンタルズとは独立している。
それでも、「今の市場が楽観に傾いているのか、恐怖に傾いているのか」を定量的に把握できるだけで、感情的な判断を避ける大きな助けになる。投資で最も高くつくのは、感情に基づいた売買だ。