「上がっている株を買う」は正しいのか

「安く買って高く売る」が投資の鉄則だと多くの人は考える。だから、すでに大きく上がった株を買うのは抵抗がある。「もう天井ではないか」「ここから買うのは高値掴みだ」と。

しかし、学術研究とクオンツの実証データは、直感に反する事実を示している。過去3〜12ヶ月で上昇した銘柄は、その後も上昇しやすい。 これが「モメンタム効果」だ。

モメンタム効果はなぜ存在するのか

モメンタム効果が発生する理由には複数の仮説がある。

1. 情報の浸透に時間がかかる

好決算が発表されても、全ての投資家がすぐに反応するわけではない。機関投資家が先に動き、個人投資家が遅れて追随し、さらに遅れてインデックスファンドのリバランスが入る。この「情報浸透の時間差」が数ヶ月にわたる上昇トレンドを生む。

2. 人間の認知バイアス

投資家は良いニュースに対して最初は慎重に反応する傾向がある(アンカリング効果)。最初の反応が不十分なため、後から追加の上昇が起きる。

3. 機関投資家の制約

大型の機関投資家は、ポジションを一度に組むことができない。流動性の制約から数週間〜数ヶ月かけて買い増す。この継続的な買い需要がモメンタムを支える。

有効な期間

モメンタム効果は測定期間によって効果が大きく変わる。

| 期間 | 効果 | 解釈 | |------|------|------| | 1ヶ月以内 | 逆効果(リバーサル) | 短期的には反転しやすい | | 3〜12ヶ月 | 最も有効 | 情報浸透と制度的要因の恩恵 | | 12ヶ月超 | 効果減衰 | 長期では平均回帰が働く |

つまり、「直近1ヶ月で急騰した株に飛びつく」のはモメンタム投資ではない。3ヶ月〜12ヶ月の中期的な上昇トレンドにある銘柄を買うのが正しいモメンタム投資だ。

モメンタムのリスク

モメンタム投資は万能ではない。致命的な弱点がある。

モメンタムクラッシュ

市場が急落する局面では、モメンタム銘柄が最も激しく売られることがある。「強い株ほど売られる」という現象が起き、これをモメンタムクラッシュと呼ぶ。

2008年のリーマンショックや2020年3月のコロナショックでは、直前まで好調だったモメンタム銘柄が大きく下落した。

高ボラティリティ

モメンタムが強い銘柄は、良くも悪くも値動きが大きい。含み益が出やすい反面、含み損も大きくなりやすい。

実践的な使い方

モメンタムだけで買わない

モメンタムは「フィルター」として使うのが効果的だ。

  1. まずファンダメンタルズで候補を絞る(PER、ROE、業績トレンドなど)
  2. その中からモメンタムが良い銘柄を優先する

「良い企業 × 上昇トレンド」の組み合わせが、最も期待リターンが高い。ファンダメンタルズが悪いのにモメンタムだけで上がっている銘柄は、短命なことが多い。

期間の使い分け

KABUDOの指標タブでは「3Mモメンタム」と「12Mモメンタム」の両方を表示している。

  • 12Mモメンタムがプラス × 3Mモメンタムがプラス: 中長期の上昇トレンドが継続中。最も強いシグナル。
  • 12Mモメンタムがプラス × 3Mモメンタムがマイナス: 長期トレンドは上向きだが短期的に調整中。押し目買いの候補。
  • 12Mモメンタムがマイナス × 3Mモメンタムがプラス: 長期下落トレンドの中での反発。トレンド転換か一時的な戻りかの見極めが必要。

KABUDOでの確認

モメンタムランキングで12ヶ月モメンタム上位の銘柄を一覧できる。ただし、ランキング上位が常に「買い」とは限らない。過熱している場合もある。

個別銘柄の株価タブで移動平均線との位置関係を確認し、株価が移動平均線から大きく乖離している場合は、短期的な調整リスクを考慮しよう。

日本市場でのモメンタム効果

モメンタム効果は米国市場で最も研究されているが、日本市場でも有効だ。ただし、日本市場特有の注意点がある。

  • 流動性が低い小型株では効果が不安定: 出来高が少ない銘柄はモメンタムの信頼性が低い
  • 決算期集中: 日本は3月決算企業が多く、5月と11月の決算発表シーズンにモメンタムが崩れやすい
  • 外国人投資家のフロー: 日本株のモメンタムは外国人の売買動向に影響されやすい

モメンタムは確率的なエッジであり、個別の銘柄で外れることは当然ある。重要なのは、確率が自分に有利な方向に傾いている局面で、繰り返し賭けることだ。