前年同期比(YoY)の落とし穴

決算発表のニュースを見ると、「営業利益が前年同期比20%増」といった表現がよく使われる。直感的にわかりやすいが、YoYだけで判断すると重要な変化を見逃す。

なぜか。YoYは「1年前との比較」なので、変化が起きてから認識するまでに最大1年のタイムラグがあるからだ。

例えば、ある企業の四半期営業利益が以下のように推移したとする。

| 期 | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | |----|----|----|----|----| | 前期 | 10億 | 12億 | 11億 | 13億 | | 今期 | 15億 | 16億 | 14億 | ? |

3QのYoYは +27%(11億→14億)で「好調」に見える。しかしQoQ(前四半期比)で見ると 2Q 16億→3Q 14億で −12.5% だ。勢いは明らかに鈍化している。

QoQ(前四半期比)で変化点を早く捉える

QoQは直前の四半期との比較なので、業績トレンドの変化を最も早く捉えられる。

ただし、QoQには「季節性」という大きなノイズがある。小売業なら12月が繁忙期、建設業なら3月の年度末に売上が集中する。季節的な変動をそのまま「成長」や「減速」と解釈するのは危険だ。

季節性を排除する方法

KABUDOの業績タブでは、累計値から単四半期の売上・営業利益を算出し、直近2年分を並べて表示している。2年分を並べるのは、季節性を目視で判断するためだ。

実践的なチェック手順:

  1. 前年同期の四半期と比較する(YoY) — 季節性を排除した成長率
  2. 前四半期と比較する(QoQ) — 直近の勢い
  3. 2つの方向が一致しているか確認 — 両方プラスなら本物の成長

YoYがプラスでもQoQがマイナスなら、「前年よりは良いが、直近はピークアウトしつつある」という解釈になる。

累計値の罠に注意

日本企業の決算短信では、四半期業績が「累計値」で開示される。1Qは1Qの数字だが、2Qは1Q+2Qの合計、3Qは1Q+2Q+3Qの合計だ。

累計値をそのまま比較しても意味がない。必ず差分を取って単四半期の数字を出す必要がある。

また、累計の進捗率も注意が必要だ。「通期予想に対して3Q累計で80%の進捗」と聞くと好調に思えるが、4Qに売上が集中する業種では80%は普通かむしろ遅れている。業種ごとの典型的な進捗パターンを知っておくことが重要だ。

四半期決算で特に見るべきポイント

利益率の変化

売上が伸びていても営業利益率が低下しているなら、値引きや原価上昇で「質の悪い成長」をしている可能性がある。逆に、売上が横ばいでも利益率が改善しているなら、コスト構造の改善が進んでいるサインだ。

予想との乖離

1Qで通期予想の30%以上を達成していれば好ペース。逆に20%を下回っていれば未達リスクが高まる。ただし、これも季節性を考慮する必要がある。

KABUDOの業績修正履歴では、各四半期での予想修正を時系列で追える。「1Q発表後に上方修正」が常態化している企業は、期初予想が保守的な証拠だ。

受注残・前受金(該当する業種のみ)

建設・IT・コンサルなど受注型ビジネスでは、四半期の売上よりも受注残の増減が将来の業績を予測する上で重要になる。決算短信の補足資料に記載されていることが多い。

まとめ

四半期決算を読むときは、YoYとQoQの両方を確認し、季節性を考慮した上で判断する。KABUDOの業績タブで直近2年の四半期推移を並べて見れば、季節パターンと直近のトレンド変化を同時に把握できる。

数字の表面だけでなく「方向と加速度」を読むことが、決算を先回りする投資家の基本動作だ。