この記事の要点
  • 地銀でPBR1倍を突破したのは約3割。未達7割超で地銀内格差が拡大している
  • 突破組は [群馬銀行](/stock/8334)・[横浜FG](/stock/7186)・[千葉銀行](/stock/8331)・[スルガ銀行](/stock/8358)・[ふくおかFG](/stock/8354) など。共通点は3つの定量条件
  • 背景は利上げ × 東証PBR要請 × 人口減の三軸構造。地銀ブームは「セクター一括」ではなく銘柄選別の時代に入った

地銀73社が「2つの群」に割れている

日銀のマイナス金利解除(2024年3月)と、東証による「資本コストや株価を意識した経営」要請(2023年3月)が重なって以降、地方銀行株は急騰した。横浜フィナンシャルグループ(7186)は直近1年で株価約 +75%ふくおかFG(8354)+84%群馬銀行(8334)+86% と、日経平均を大きく上回る上昇率になっている(Fundabase独自集計)。

しかしすべての地銀が買われたわけではない。日経新聞の銀行株分析では「銀行株はなお8割が解散価値割れ」と報じられ、その後も地銀全体の約7割はPBR1倍未満が続いている(日本経済新聞 2025年12月記事)。一方、Fundabaseで地方銀行73社を再集計したところ、PBR1倍を突破した地銀は約21社にのぼる(2026年4月時点)。

つまり地銀は「セクター全体が買われている」のではなく、突破組と未達組に二極化している。本記事は、突破組がどんな条件を満たし、未達組と何が違うのかを、Fundabase独自集計で整理する。

21
PBR1倍突破組(地銀73社中)
7割超
PBR1倍未満が依然多数
+86%
群馬銀行 直近12ヶ月騰落率
1.40
群馬銀行・スルガ銀行 PBR

突破組の代表5社 — 群馬・横浜・千葉・スルガ・ふくおか

数値で並べると突破組の中核がはっきり見える。下記は PBR・ROE・配当利回り・モメンタム の4軸で総合的に上位にある主要5社(Fundabase独自集計、2026年4月時点)。

銘柄コードPBRROE予想PER配当利回り12ヶ月騰落率
群馬銀行83341.407.8%14.03.0%+85.7%
スルガ銀行83581.406.8%11.62.7%+94.5%
横浜FG71861.306.4%15.82.7%+74.9%
千葉銀行83311.306.5%15.92.6%+75.7%
ふくおかFG83541.207.8%13.62.9%+83.8%

注目すべきは、5社とも ROE 6%以上 × 配当利回り 2%以上 × 過去1年で大幅上昇という三拍子が揃っている点。地銀全体平均のROEは4-5%台にとどまるため、6%超は明確な分水嶺になっている。

要点

突破組5社の共通点は 「ROE 6%以上+配当継続意思+商圏の実需」。単に株価が上がっただけではなく、資本効率と株主還元の数字が下支えとして揃っている。

突破組に共通する3つの定量条件

1. ROE 6%以上 — 資本効率の閾値

PBR は理論上「ROE × 投資家の期待」で評価される。ROEが資本コスト(一般に6-8%とされる)を超えていなければ、市場はPBR1倍を許容しにくい。突破組5社のROEは6.4〜7.8%でいずれも資本コストの下限を超えており、市場が「この銀行は株主資本を活かして稼いでいる」と判定している。

逆にPBR1倍未満組(山口FG九州FGちゅうぎんFG等)はROEが4-5%台にとどまる。利上げ恩恵が同じように来ても、構造的に資本効率が低い銀行は評価されにくい。

2. 株主還元の継続意思 — 配当 × 自社株買い

突破組はいずれも直近期の配当増額・自社株買いを公表している。群馬銀行は2025年2月に累進配当方針(減配せず維持または増配を基本とする方針)を導入し、配当性向と自己株式取得を合わせた総還元率を55%超に引き上げた(日本経済新聞 2025年2月発表記事)。千葉銀行・横浜FG・ふくおかFGも同様に増配と自社株買いの組み合わせを継続している。配当利回りは2.5%超を維持しており、高配当だけでなく「増配と自社株買いを継続する意思」が市場に明示されている。

これは東証2023年3月の「資本コスト経営」要請に対する経営側の回答であり、PBR1倍未達の銀行と最も大きな差がついた領域である。

3. 商圏規模・地域経済の追い風

PBR1倍突破組には首都圏・東海・北部九州・京阪神といった都市部または成長地域に基盤を持つ銀行が並ぶ。

突破組主要商圏地域特性
横浜FG神奈川・首都圏南西部人口流入継続
千葉銀行千葉・首都圏北東部人口安定、再開発進行
群馬銀行北関東物流・製造業集積
ふくおかFG北部九州福岡市の人口流入は政令市最高水準
スルガ銀行静岡・首都圏個人向けローン特化

人口が減らない地域、あるいは産業集積地に基盤を持つ銀行は、貸出残高を維持・拡大できる。これが利ざや拡大と組み合わさることで、収益力に明確な差がつく。

PBR1倍は結果であって原因ではない。
3条件(ROE・還元・商圏)を揃えた銀行が、そこに到達している。

未達組7社の何が足りないか

PBR1倍未満の地銀(地方銀行協会加盟の代表行ベース)を並べると、共通する弱点が見えてくる。

銘柄コードPBRROE12ヶ月騰落率
山口FG84180.905.7%+75.7%
九州FG71800.804.3%+96.6%
ちゅうぎんFG58320.905.1%+96.9%
十六FG73800.804.9%+142.7%
北洋銀行85240.905.4%+123.5%
大垣共立銀行83610.904.6%+235.6%
あおぞら銀行83040.804.5%+43.8%

注目点は、過去1年の株価は突破組以上に伸びている銀行も含まれること。市場は未達組にも上昇余地を織り込み始めているが、依然として PBR が1倍に届かないのは、ROEが構造的に低い・人口減少地域・債券含み損リスクなどの懸念が解消し切れていないため。

注意

未達組の上昇率が大きいのは、「PBR 0.5倍 → 0.8倍」という伸びしろが大きいからでもある。PBR1倍に到達できるかどうかは、結局ROEが資本コストを超えられるかにかかる。利上げ恩恵だけで届く銀行と、構造的に届かない銀行が分かれる局面に入っている。

地銀は2026年3月期決算で「金利急上昇による保有債券の特別損失」が相次ぐ可能性も指摘されており、債券運用依存度が高い銀行はその分、評価が伸び悩むリスクがある(ダイヤモンド・オンライン 中間決算分析)。

これからどう動くか — 利上げ × PBR改革 × 人口減の三軸

地銀の評価変動は、3つの大きな潮流の同時進行によって起きている。

  • 利上げサイクル継続 — 政策金利は2025年12月に0.75%、2027年半ばに1.5%予想。利ざや拡大が続く環境
  • 東証PBR1倍要請 — 自己資本政策・株主還元の継続強化が求められる。応えた銀行と応えない銀行で評価差が拡大
  • 人口減・地域経済格差 — 都市部基盤の地銀は貸出残高を維持できる一方、過疎地基盤は構造的に逆風

これらの潮流は短期的には反転しにくい。3年スパンで考えれば、突破組のPBR水準が 1.4 → 1.7-2.0 に伸びる余地もあれば、未達組の一部が人口減と債券損で取り残される可能性も同居している。

地銀=「セクター一括ロング」の時代は終わり、個別銀行の3条件(ROE × 還元 × 商圏)で選別する局面に入ったと整理できる。

注意点 — 過去パターンを機械的に当てはめない

利上げ局面の銀行優位という構造は過去30年で3回確認されているが、サイクル後半は逆転しうる点には注意が必要である(日銀利上げで本当に勝った5業種で詳述)。

  • 利上げが景気後退を招くフェーズに入ると、不良債権リスクが顕在化する
  • 急速な利上げは保有国債・社債の含み損を膨らませる(特に長期債を多く保有する地銀)
  • PBR1倍を超えた地銀でも、ROEが資本コストを下回ると再びPBR1倍割れに戻る可能性がある

突破組の上位5社は現時点での総合力が強いが、これは今後3年程度の追い風が続く前提の評価である。景気後退のサインや債券含み損の拡大が報じられた場合は、この構造の見直しが必要になる。

要するに
  • 地銀73社のうちPBR1倍突破は約21社、未達は7割超。「セクター一括」ではなく銘柄選別の時代に入った
  • 突破組の3条件は ROE 6%以上 / 配当・自社株買いの継続意思 / 都市部または成長地域の商圏
  • 代表は群馬銀行・スルガ銀行・横浜FG・千葉銀行・ふくおかFGの5社。いずれも3条件を揃えている
  • 利上げ × 東証PBR要請 × 人口減の三軸が同時進行。サイクル後半の景気後退・債券含み損リスクには引き続き注意

※ 関連記事: 日銀利上げで本当に勝った5業種 / 高配当株の持続性を見極める